ドラえもんとサザエさんに並ぶ国民的漫画といえば『ちびまる子ちゃん』です。
長寿漫画になると、時代の違い故、どうしても初期の頃の作品に現代ではNGな部分が出てきてしまい、結果封印されてしまうことがあります。

比較的新しいタイトルである『ちびまる子ちゃん』ですが、実は「りぼん」に掲載された全作品の中で、唯一単行本に収録されていない欠番作品がひとつだけ存在します。
”少女まんが史に残るフツーの人まんが” と謳われるまる子に封印作品があるのは意外ではありますが、封印作品マニアの間ではかなり有名な作品となっています。
それは『ちびまる子ちゃん』の第98話で、サブタイトル「まる子、夢について考える」です。

出典:さくらももこ「ちびまる子ちゃん」(『りぼん』2月新春特大号/1995.2/p.417)
別名、「まる子 封印回」や「まる子 発狂回」「まる子 恐怖回」などとも呼ばれています。
ごまメモ
この扉絵に使われている絵は、当時発売されたゲーム『まる子デラックスクイズ』のパッケージにも使用されています。ちなみにこのゲームのNEOGEO版は、取引価格20万円以上というとんでもない超高額なプレミアが付いているゲームとしても有名です。
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ちびまる子ちゃん 幻の第98話を手に入れる!!
「まる子、夢について考える」は、ちびまる子ちゃんの第98話として雑誌「りぼん」の1995年2月号に掲載されました。
なぜか今になって映画化が決まった『ママレードボーイ』が表紙ですね (^ ^)
ごまは元々、さくらももこ作品が超々大好きなので、『ちびまる子ちゃん』だけでなく、他の漫画やエッセイはもちろん、さくらももこが編集長を務めた雑誌『富士山』なんかもコンプリートしていました。
当時、『富士山』や『さくら日和』のエッセイを読んで、さくらプロダクションに就職したいと本気で思っていた程です。
なので、まる子の封印作品が有名になる前から、単行本13巻の説明で単行本未収録の作品があることは知っていました。
さくらももこファンとしては絶対に読まねば!と、当時からずっと思っていたので、オークションで掲載誌の「りぼん」を見つけた時は速攻落札しました。

という訳で、いろんなサイトで紹介されているまる子封印作品ですが、さくらももこファン&単行本未収録作品マニアとして、どこよりも正しく詳しく「まる子、夢について考える」の詳細を、実物を参考に紹介していきたいと思います。
ちびまる子ちゃん封印作品 単行本未収録の理由
そもそも、なぜ「まる子、夢について考える」が封印されてしまったのか?!
ネットでは「まる子 発狂回」は作者が発狂しているらしいとか、内容が怖すぎてクレームが来たからとか、色々な説が飛び交っていますが、本当の理由はちょっと違います。
単行本未収録は作者であるさくらももこの意向
「まる子、夢について考える」が収録される予定だった『ちびまる子ちゃん』の単行本13巻で、さくらももこ先生ご本人が、第98話の件に関してご説明されています。

出典:さくらももこ『ちびまる子ちゃん』/13巻/p.84(集英社/1995)
結論としては、「あらゆる状況が重なって、超多忙の中でかなり無理して描いた作品だった為、冷静になって読み返した時にさくら先生ご自身の中で納得出来ない部分があり、今回は単行本という形として残すことを見送った・・・」ということになります。
クリエイターとしては当然の気持ちかもしれません。
むしろ、この状況で他の作品は全て完成させたことが驚異的って位の忙しさですよね。

恐らく、「りぼん」の扉絵がゲームのパッケージと同じ件も、忙し過ぎて扉絵まで描けなかった為、『まる子デラックスクイズ』のゲームパッケージ用に描き下ろしたものを使用したのでは?と思います。
”クレームが原因” はガセネタ
封印作品といえば、表現上の問題や倫理的問題、著作権問題またはクレームなどが主な理由で、外的な要因が多くを占めます。
その為、一部ではこの「まる子、夢について考える」も、怖すぎて当時のりぼんを読んだ子供が泣いてしまった為にクレームや抗議が殺到して封印された・・・的なウワサもありますが、ガセネタですね。
封印作品の理由として、上記の外的要因以外だと、”自主規制” か ”作者本人が望まないケース” が挙げられますが、今回は後者の ”作者本人が望まないケース” が当てはまります。
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ちびまる子ちゃん 幻の第98話「まる子、夢について考える」 内容とあらすじ
「りぼん」に掲載された内容をページ毎に紹介していきます。

1ページ目
洞窟の中に響く怪しい歌声と不気味な仮面を付けて踊る邪教徒達。
岩陰から覗き見していたまる子だったが邪教徒に見つかってしまう。
「ぎゃああ 助けてぇぇ 神様ぁぁ」と叫びながら逃げるまる子。
それに気付く王子様風のかっこいい男の子。

出典:さくらももこ「ちびまる子ちゃん」(『りぼん』2月新春特大号/1995.2/p.419)
2ページ目
まる子を助ける王子様風少年。
「ちくしょーっ 許してくれよう」と言いながら仮面を外した邪教徒は藤木だった。
永沢君もいて、小杉は死んでハエがたかっている。

出典:さくらももこ「ちびまる子ちゃん」(『りぼん』2月新春特大号/1995.2/p.420)
まる子「小杉はなんで死んだの?」
王子様風少年「食べ過ぎだ …それより まる子 結婚しようぜ」
「まだ3年生なのに」と驚くまる子に「別にいいじゃん」という王子様風少年。
「おかあさんとおとうさんに聞いてみる」と言いながら恍惚の表情を浮かべるまる子。
3ページ目
「結婚するってホント?」「学校はやめるの?」と問いかけるたまちゃんととしこちゃん。
そして平安時代のお姫様の恰好をした野口さんが現れ、
「さくらさん ここは平安時代ではないんですよ」「ほら 外をのぞいてごらんなさい」
と言って御簾をめくり外をまる子に見せる。
野口さん「ここはアメリカ ブロードウェイのつもり」
外にはブロードウェイ風の景色が広がる。

出典:さくらももこ「ちびまる子ちゃん」(『りぼん』2月新春特大号/1995.2/p.421)
感動するまる子。
まる子は舞台の裏で座りこんで泣いている女の子を見つける。
4ページ目
泣いている女の子はおかあさんの子供の頃の顔をしていた。
場面は突然おばあちゃんの家に。
子供の頃のおかあさんが「かくしておいたのに」「ないよう だれかにとられた」と言って泣いている。
なぜかいる山田「オレしらないもんねー」
眠くなるまる子に「起きなさいっ ぶつよっ」と子供の頃のおかあさんが叫ぶ・・・。
ここで夢のシーンは終わる。
場面は変わって、教室でたまちゃんと会話するシーンへ。
たまちゃんに今朝見た夢の話をするまる子。
夢なんてそのうち忘れちゃうと言うまる子に、忘れちゃもったいないからメモしておこうと言うたまちゃん。
5ぺージ目
夢の絵を描くまる子。
王子様風少年がうまく描けなくてたまちゃんに説明するがいまいち分かってもらえない。
6ページ目
花輪君が登場して、前世と潜在意識についてまる子達に説明する。

出典:さくらももこ「ちびまる子ちゃん」(『りぼん』2月新春特大号/1995.2/p.424)
7~9ページ目
花輪君に王子様風少年は前世では恋人だったのかもしれないねと言われたまる子は妄想の世界に入っていく。
妄想の世界の内容は・・・
まる子は村娘、王子様風少年はある国の王子で結婚を反対されて嵐の夜に家出する。
島へ流れ着き、またあの邪教徒を見る。
その後大冒険をいろいろして、結婚式をあげて3人の子供が出来る。
ふたりはふるさとへ帰ろうと決心して船に乗る。
お城に戻ってみると、王様とお妃様は泣いて喜びふたりに謝って、ふたりは国王と王妃になり幸せに暮らす。
この妄想部分の絵柄が冒頭の洞窟のシーンと同じで、いつものタッチではなく劇画調に描かれていて、ここは明らかにいつもの『ちびまる子ちゃん』とは違います。

出典:さくらももこ「ちびまる子ちゃん」(『りぼん』2月新春特大号/1995.2/p.425)
まる子の妄想中にたまちゃんも妄想の世界に行っちゃったりして、花輪君はそんなふたりにドン引きして去って行く。
10ページ目
妄想シーンから教室の場面に戻る。
妄想の幸せな世界に満足したまる子。
小杉を呼び止めて「あんた 毎日食べすぎだね」「顔に死相がでてるよ」などと告げる。
わけの分からない小杉。
そのやりとりを見ている永沢君と藤木。

出典:さくらももこ「ちびまる子ちゃん」(『りぼん』2月新春特大号/1995.2/p.428)
11ページ目
永沢君と藤木は節分の話をはじめる。
去年は鬼を追い出さなかったから火事になったと言う永沢君。
藤木は鬼は無関係だと知っていたが、そこは黙って永沢君の作った鬼の面を見たいと言う。
永沢君「これだけど 藤木君 してみるかい」
本当は見たくもしたくもない藤木だったが「うん…したいな」と言って面を付ける。
なんと、その面はまる子が夢で見た邪教徒の顔だった!
まる子は驚いて、現実と夢の世界がごっちゃになってしまう。
「出たな 悪者めっ」と叫ぶまる子。
まる子とクラスのみんなで豆(?)を藤木に投げつける。

出典:さくらももこ「ちびまる子ちゃん」(『りぼん』2月新春特大号/1995.2/p.429)
12ページ目
藤木は泣きながら面をとる。
その光景も冒頭の夢のシーンと同じだった為、藤木は前世で邪教徒だったに違いないと決めつけるまる子。
そこからまた、まる子は王子様風少年との妄想の世界に入っていく。
妄想のせいで突然泣き出すまる子に驚くクラスメイトと引き気味のたまちゃん。
13ページ目
場面は変わって授業中。
王子様風少年を想いながら眠くなっていくまる子。
まる子(…そういえば今朝の夢… お母さん 何で 泣いてたんだろ…)
場面は変わってまる子の実家へ。
隠していた節分用の豆が盗まれていることに気付いたお母さん。
影からそれを見てほくそ笑む友蔵。
場面はまる子の夢のシーンへ。
平安時代の恰好をした野口さんが「私は平安時代の人ではない」と言っている。
14ページ目
「知らないぞ」と言いながら逃げる野口さんを追うまる子。
いきなり現れた山田「知らないぞ オレ 平安時代より昔のことなんて」「マンモスしか知らないぞ」
突然マンモスが襲ってきて、驚いて逃げるまる子。

出典:さくらももこ「ちびまる子ちゃん」(『りぼん』2月新春特大号/1995.2/p.432)
気付いたら空の上で気球に乗っていたまる子。
一緒に乗っていたのはあの王子様風少年だった。
「あ あんたは…」と言って話しかけようとしたまる子だったが、小杉が割りこんでくる。
しつこい小杉に怒るまる子。
15ページ目(ラストページ)
場面は授業中の教室へ。
「小杉は 食べすぎで 死んでりゃいいのっ」「わたしゃ 前世で この人とねェ」
と大声で叫びながら起きて立ち上がるまる子。
現実に戻ってハッとするまる子と、静まり返る教室。
ナレーション「今 まる子にとって大切なのは 前世より 反省であった」
場面は変わって、家で友蔵が盗んだ豆を食べているところで終了。

出典:さくらももこ「ちびまる子ちゃん」(『りぼん』2月新春特大号/1995.2/p.433)
information
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ちびまる子ちゃん封印作品 実際に読んでみた感想
ネット上では、内容や封印理由について様々な説が錯綜していますが、怖すぎると言われているほど怖くはないように思います。
ちょっと展開が分かりづらくてセリフが多いので、若干ついていけない感はあるかもしれませんが・・・。
ごまはこの回を見て、なぜか『神のちから』を思い出しました。
テイストがちょっと似ているのかもしれません。
確かにこの封印回は、「ちびまる子ちゃん」としては少し違和感を感じる内容ではありましたが、なんというか、さくらももこ作品のブラックな部分も含めてあらゆる面がこの一つの作品の中で混ざっちゃった的な印象を受けました。
ちなみに掲載誌の「りぼん」の最後のアオリ文は
“ いかがでしたか?新春にふさわしいゴージャスなスペシャル版。アニメともども今年もよろしく。”
でした。
最終的に、色んな意味で本当にスペシャルになりましたね。

ちびまる子ちゃんの封印作品を全て画像で見たいという方は、無理して掲載誌を手に入れなくても、国立国会図書館で読むという方法もありますよ。
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最後に
私事ですが、実はこの記事は当ブログ『プレミアムごま』のちょうど50記事目なんです。
節目は特に好きな作家とお気に入りのコレクションで!と決めていたので、今回この作品を紹介することにしました。
個人的に「単行本未収録」というジャンルが大好きなので、ゆくゆくはこのジャンルでシリーズ化出来たらいいなと思っています。
