和田慎二の『銀色の髪の亜里沙』です。
マーガレットコミックスと花とゆめコミックスの両レーベルから刊行されているタイトルのひとつです。
MCと花ゆめの両レーベルから刊行されているタイトルは、大体花ゆめ版の方がモノが少なく珍しいのでプレミアが付きやすいのですが、『銀色の髪の亜里沙』についてはマーガレットコミックス版の方があまり見かけずレアなような気がします。
マーガレットコミックス版のみ、デビュー作の『パパ!』が収録されていて、花ゆめ版には収録されていません。
作者の和田先生曰く、”『スケバン刑事』を描くまでは私の代表作はこの『銀色の髪の亜里沙』だと言われ続けました。良くも悪くもヒット作であり出世作でもあります。” とのことです。
その通り、数々の傑作の原点ともいえる作品だと思います。
ごまメモ
実は「神恭一郎」の幻のデビュー作でもあります。同じ「別冊マーガレット」の同年8月号に掲載された『愛と死の砂時計』でデビューした彼は、『銀色の髪の亜里沙』で悪役として登場する予定でボツになった予告カットに描かれていましたが、ページの都合で本編ではカットされました。
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銀色の髪の亜里沙 あらすじ
主人公は大企業の社長令嬢・本条亜里沙。
亜里沙は13歳の誕生日を父の部下の娘である4人の同級生、京崎美尾・信楽紅子・青木恵子・川崎マサコに祝って貰いながら幸福でいっぱいだったが、その直後に父がK町の外れの崖から車ごと転落して死亡したという訃報が届く。
美尾以外の3人に誘われ、亜里沙は悲しみを癒す為のハイキングへ行くが、そこで父の死が会社の重役である紅子の父・信楽の陰謀による偽装事故であることを知らされる。
そして口封じのために亜里沙は脱出不可能と言われる「吐竜窟」に投げ込まれてしまう。
亜里沙の母もまた、同じ頃に信楽一派の重役たちに脅されて企業の権利書を奪われ「野沢精神病院」に放り込まれていた。
激流に流された亜里沙は、吐竜窟より約40mの厚い壁を隔てた翡翠の地層に囲まれた洞窟に奇跡的に打ち上げられ、そこで12年前に事故で閉じ込められた考古学者の老夫婦に出会う。
老夫婦から現状を知らされ、亜里沙は裏切られた衝撃と悲しみに打ちのめされるが、やがてその感情を復讐の意思に変え、生きるために立ち上がる。
亜里沙は老夫婦の夫からは様々な知識と知恵を、妻からは少女らしい優しい心を保ち続けるよう教育を授けられて成長していき、暗い洞窟の中で糧を得るために岩々を飛び回って魚を捕るうち、知らず知らずのうちに運動能力を鍛えられていった。
4年後、老夫婦は亜里沙に脱出のためのヒントを与えた後、相次いで亡くなってしまう。
亜里沙はそのヒントによって、命がけながら吐竜窟を脱出することに成功するが、月光に照らされた自分の髪が、洞窟内での生活により白髪さえ通り越して銀髪に代わっていたことに気付き、嘆きながらその場を立ち去った。
そして、亜里沙は洞窟内の翡翠を資金源に復讐を開始する。
まずは生き別れとなった母を求めて野沢精神病院へ乗り込むが、アル中の院長から聞き出せたのは、母が食事を拒んで自死したという事実だった。
数ヶ月後、亜里沙は名門と謳われる青陵高等学校に、「飛鷹アリサ」として入学する。
そこにはかつて亜里沙を陥れた3人の友人がいて、それぞれ学業・陸上競技・演劇の世界で名声を欲しいままにしていた。
亜里沙は彼女たちがそれぞれ最も得意な分野で真っ向勝負を挑み、叩き潰すことを決意する。
一方、亜里沙の親友である美尾は、亜里沙の身に何が起こったかを知らされないまま、変わることなく彼女の生還を信じ、待ち続けていた。
亜里沙は美尾に対しては、互いに想い合う少年・沖田との恋のアシストをするなど優しく接し、彼女を自身の復讐劇に巻き込むまいと決意する。
成績トップの恵子にはテストで勝ち、陸上で高校生の日本記録を持つマサコに対しては、目の前でそれ以上のスピードで走ってみせコーチの期待を奪った。
アリサからその正体を知らされたマサコは恐怖にかられ、恵子の家へと逃げ込むが、そこで彼女が見たものは、恋人にも振られ悲嘆のうちに自ら首を吊った恵子の死体だった。
マサコは発狂し、騒ぎを聞いて駆けつけた恵子の両親は、変わり果てた娘の姿と泣きながら笑い続けるマサコを見て呆然と立ち尽くす。
残るは会社の権利書を奪った信楽と、自分を裏切り吐竜窟に落とした紅子となった。
亜里沙は紅子が芸能界デビューの舞台で使う仮面に特殊な細菌を塗りつける。
アリサの正体を察した信楽親子は亜里沙を捕らえるが、紅子は亜里沙が仮面を破棄しようとしたと勘違いし、自分のデビューを見せつけてやろうと、彼女の目の前で仮面をつける。
しかしすべては亜里沙の計算のうちで、紅子は細菌毒によっていつ顔の皮膚が腐食するか分からない恐怖に苛まれることに耐えられず、自ら死を選ぶ。
娘が炎に包まれるその状景に、信楽は放心してその場に崩れ落ちた。
復讐を終えた亜里沙が日本を離れようとしていた時、「飛鷹アリサ」が亜里沙だと気付いた美尾が駆けつける。
亜里沙はいつか美尾と「本条亜里沙」として再会することを誓いつつ、銀髪を風になびかせ旅立つのだった。
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銀色の髪の亜里沙の原作 モンテ・クリスト泊(巌窟王)
実は『銀色の髪の亜里沙』は、ごまの超お気に入りドラマ『モンテ・クリスト伯』と原作が同じなんです!
ちなみに、ドラマの第2話のシンガポールの銀行のシーンが一番好き。
モンテ・クリスト伯とは?
原作の『モンテ・クリスト伯』はアレクサンドル・デュマ・ペールによる小説で、日本では『巌窟王』(がんくつおう)の題名でも知られています。
主人公エドモン・ダンテスが無実の罪で監獄に送られ、そこで長い年月を過ごした後、脱獄して巨万の富を手にし、モンテ・クリスト伯爵を名乗って自らを陥れた者たちの前に現れ、復讐していく物語です。
日本では、明治時代に黒岩涙香が『史外史伝巌窟王』の題名で翻案し、1901年(明治34年)3月18日から1902年(明治35年)6月14日まで『萬朝報』に連載されました。
1905年(明治38年)に大阪の出版社・青木嵩山堂から全4巻で刊行され、それ以降日本では長く『巌窟王』の名で一般に親しまれることとなりました。
黒岩涙香の『巌窟王』は、当時の日本人がなじみやすいように人名や船の名前を日本風に変えていますが、舞台はヨーロッパのままで、ストーリーも原作とほぼ同じです。
モンテ・クリスト伯は実話だった?!
なんと、この壮絶な復讐劇には元となった実話があるそうです!!
1807年から1824年にかけて起こった実在の事件から着想を得て描かれています。
その事件とは、ピエール・ピコーという靴職人の男が、資産家の女性との結婚を妬んだ友人たちによる偽りの密告で逮捕され、フェネストレル要塞に7年間収監された後、釈放後に様々な人物に扮してかつての友人たちを殺したという事件です。
パリ警察の記録係であったジャック・プシェがまとめた「復讐とダイヤモンド」(Le Diamant et la Vengeance)という犯罪記録にこの事件が記載されていて、これを読んだアレクサンドル・デュマ・ペールが内容を膨らませて書いた小説が『モンテ・クリスト伯』なんだそうです。
銀色の髪の亜里沙 刊行詳細
連載別冊マーガレットの1973年4月号から5月号に前後編で掲載
単行本マーガレットコミックスで1973年11月20日に初版刊行
マーガレットコミックス収録内容
- 銀色の髪の亜里沙(別冊マーガレット1973年4月号・5月号 掲載)
- お嬢さん社長奮戦中!(デラックスマーガレット1972年春の号 掲載)
- 冬の祭(デラックスマーガレット1971年冬の号 掲載)
- パパ!(別冊マーガレット1971年9月号 掲載)※デビュー作
銀色の髪の亜里沙 復刊情報
集英社漫画文庫(集英社)
収録内容
- 銀色の髪の亜里沙(別冊マーガレット1973年4月号・5月号 掲載)
- お嬢さん社長奮戦中!(デラックスマーガレット1972年春の号 掲載)
- 冬の祭(デラックスマーガレット1971年冬の号 掲載)
- パパ!(別冊マーガレット1971年9月号 掲載)
花とゆめCOMICS(白泉社)
収録内容
- 銀色の髪の亜里沙(別冊マーガレット1973年4月号・5月号 掲載)
- お嬢さん社長奮戦中!(デラックスマーガレット1972年春の号 掲載)
- 冬の祭(デラックスマーガレット1971年冬の号 掲載)
STコミックス(大都社)
収録内容
- 銀色の髪の亜里沙(別冊マーガレット1973年4月号・5月号 掲載)
- メイキング①
- お嬢さん社長奮戦中!!(デラックスマーガレット1972年春の号 掲載)
- 姉貴は年した!?(別冊マーガレット1972年8月号 掲載)
- 冬の祭(デラックスマーガレット1971年冬の号 掲載)
- メイキング②
- 愛と死の砂時計(別冊マーガレット1973年8月号 掲載)
- メイキング③
書籍扱いコミックス(秋田書店)
収録内容
- 銀色の髪の亜里沙(別冊マーガレット1973年4月号・5月号 掲載)
- 大逃亡(別冊マーガレット1974年1月号・2月号 掲載)
- もりそば幻想(和田慎二コレクション1983年)
- 続もりそば幻想(和田慎二コレクション1983年)
- 四次元コート(和田慎二コレクション1983年)