楳図かずおの『猫目小僧』です。
サンコミックス版全5巻。
漫画『猫目小僧』は、やっぱりキングコミックス版が人気もレア度もダントツです。
ごまのはサンコミver.だけど、全初版&スリップ(売上カード)付なの。
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漫画 『猫目小僧』
猫目小僧 あらすじ
猫目小僧は妖怪の世界で300年に一度しか生まれない猫又の子供として誕生しました。
猫又の父親と人間の母親の間に生まれますが、その姿が人間に近い容貌だったせいで妖怪一族に拒絶され殺されそうになってしまい、見かねた父親によって人間に預けられます。
妖怪からはハンパ者とつまはじきされ、人間からは化け物といじめられながらも、猫目小僧は一人旅を続けます。
けして正義の味方ではありませんが、行く先々で様々な怪奇の事件に遭遇し、不敵に立ち向かった結果人助けをすることもあります。
妖怪からも人間からも忌み嫌われる猫目小僧が、ダーク・ヒーローとして活躍するオムニバス・ホラー作品です。
猫目小僧 連載と掲載誌
初出誌は「少年画報」で、1967年12月号から1968年5月号に『不死身の男』と『みにくい悪魔』の2編だけ掲載されました。
掲載誌が変わって「少年キング」の1968年17号から1969年13号に、『妖怪水まねき』『大台の一本足』『妖怪百人会』『妖怪肉玉』『妖怪千手観音』が掲載されます。
『妖怪百人会』の掲載時のタイトルは『小人ののろい』
ごまメモ
『妖怪水まねき』は猫目小僧の誕生エピソードで『赤んぼう少女』のタマミがちょこっと登場しています。
その後、『妖怪伝 猫目小僧』のアニメがテレビ放送されたのに合わせて、「週刊少年サンデー」の1976年(20号・25号・35号・40号)に『手』『階段』『ともだち』『約束』が描き下ろされました。
『約束』はサンコミックス未収録
ごまメモ
単行本収録順は掲載順とは異なるので、絵やキャラクターの変化に違和感を感じるかもしれません。
猫目小僧 漫画刊行詳細
- キングコミックス
1969年/少年画報社(全3巻) - 少年サンデーコミックス
1976年~1977年/小学館(全5巻) - サンコミックス
1982年/朝日ソノラマ(全5巻) - サンワイドコミックス
1986年/朝日ソノラマ(全3巻) - スーパービジュアル・コミックス
1991年/小学館(全2巻) - ビッグコミックススペシャル(UMEZZ PERFECTION!6)
2006年/小学館(全2巻) - 講談社漫画文庫(楳図かずお ゴシックホラー珠玉作品集2 ねこ目小僧「少年画報」版)
2013年/講談社(全1巻)
アニメ 『妖怪伝 猫目小僧』
1976年4月1日から1976年9月30日まで東京12チャンネル(現・テレビ東京)にて、『妖怪伝 猫目小僧』のタイトルで全24話(本放送時には再放送あり/全27回)のテレビアニメが放送されました。
1976年当時の東京12チャンネルは自身の系列ネット局を持っていませんでしたが、本放送時に系列外である山陰中央テレビ、石川テレビ、南日本放送の3局が同時ネットを実施しました。
原作者の楳図かずおがオープニング主題歌の作詞・作曲とエンディング主題歌の作詞を担当しています。
ごまメモ その1
当時「週刊少年サンデー」に連載中だった『まことちゃん』の劇中で、アニメ『妖怪伝 猫目小僧』の宣伝が行われていました。
ごまメモ その2
アニメ化される前に、ソノシートでドラマ化されています。この時に猫目の声を担当したのは『ドラゴンボール』でお馴染みの野沢雅子さん、小人の声は永井一郎さんでした。
漫画版とアニメ版の違い
原作漫画の猫目小僧は猫を操り人間を襲う比較的冷酷キャラですが、アニメ版の猫目小僧は原作よりも優しく大人しいキャラで描かれています。
各話のストーリーの筋立ても原作のホラー色というよりも勧善懲悪ものに近い構成となっています。
また、旅する目的が母親探しとなっていて、そこにも重点が置かれ、最終話のラストは猫目小僧と母との再会で締めくくられています。
ごまメモ
原作では猫の口を表現する為に猫目小僧の上唇が割れていますが、これが三つ口(口唇口蓋裂)であると問題視されアニメでは普通の口になっています。
ゲキメーションによる異色作
テレビアニメ版『妖怪伝 猫目小僧』は、従来のセルアニメーションの技法は使用せず、全編切り絵に特殊視覚効果を交えて撮影した「ゲキメーション」(劇画+アニメーションの造語)による異色作です。
原作よりはホラー色の少ないストーリー構成ではありますが、絵柄の雰囲気や、その独特の映像効果は不気味さを増長し、当時の子供達に恐怖感を抱かせるには十分効果的でした。
ゲキメーションとは?!
独特な表現手法で作られたアニメ映像のことです。
ベースは、絵で描かれた背景の前で、紙に書かれた切り絵のキャラが動いている立体紙芝居のような感じです。
そこに、例えば土砂崩れのシーンは本物の土砂を絵の上に撒き、煙まかれるシーンでは本当に煙が出てきたり、雨の場面では実際に水をかける、火が出る場面は本当に燃やすなど、演出効果は実写が用いられているといった特殊技法で制作されています。
昭和のアニメの手法はセル画だった為、ゲキメーションは当時としてはかなり斬新で、そのせいか他の作品にゲキメーションが使われることはありませんでした。
ごまメモ
1977年に富士フイルム技術賞(第10回)を受賞しています。
猫目小僧「妖木こだま」ゲキメーション動画
ゲキメーションによるアニメ『妖怪伝 猫目小僧』は、絵の雰囲気・切り絵の動き・それに溶け込んでいる実写演出が、なんともいえない独特な世界観を作り出していて、今見ても一周まわって斬新というか、非常に味のある魅力的作品に仕上がっていると思います。
今ゲキメーションで新しい作品を作ったら結構ウケるのではないでしょうか?!
『妖怪伝 猫目小僧』 映像ソフト
1990年代初頭、12話分を収録したビデオカセットと全24話を収録したLD-BOXが発売されました。
また、実写版劇場映画『猫目小僧』収録DVDに、アニメの第1話から第3話までが特典映像として収録されています。
全話を収録したDVDは発売されていません。
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実写版映画 『猫目小僧』
2006年6月10日に、アートポート配給により実写版映画『猫目小僧』が公開されました。
楳図作品の大ファンであることを公言していて、『まだらの少女』で楳図ワールドの映像化の実績もある異才監督・井口昇の手によって実写映画化されました。
ごまメモ
これより前に、1968年の『蛇娘と白髪魔』に続く楳図漫画の映画化シリーズとして、1969年に大映東京撮影所で実写映画化の企画がありましたが、幻となりました。
ちなみに実写の猫目小僧は、メイクではなくベタなマスクをつけたビジュアルとなっております・・・。
アニメとは違った意味で独特な表現手段といえます。
実写版ストーリー
猫目小僧は、300年に1度しか生まれない妖怪猫又の子としてこの世に生を受けますが、人間に近い容姿だったために妖怪一族から見捨てられ旅に出ます。
容姿のせいで人間から嫌わていた猫目小僧は日々寂しさの中で暮らしていましたが、さすらいの果てにたどり着いた村で、東京から引越してきた藤崎まゆか(石田未来)に出会います。
まゆかは美少女でしたが、左頬にあるあざのせいでふさぎがちでした。
そんなまゆかにかなわぬ恋心を抱く猫目小僧は、村に現れた妖怪ギョロリ(竹中直人)の魔の手がまゆかに迫っていることを知り、最強の妖怪に決死の戦いを挑みます。
実写版キャスト
- 藤崎まゆか・・・石田未来
- 藤崎勝・・・田口浩正
- 藤崎浩・・・向江流架
- 関根雄次・・・載寧龍二
- 関根信男・・・つぶやきシロー
- 関根瑞枝・・・伊藤さやか
- ギョロリ・・・竹中直人
- 弘子・・・くまきりあさ美
- 翔・・・津田寛治
- 由美・・・石坂ちなみ
- 野田京子・・・中村映里子
- 沼田村長・・・諏訪太朗
- 猫目小僧(声)・・・矢島晶子
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当時発売された猫目小僧のグッズ
『猫目小僧』はテレビ化を意識した作品だったらしく、当時様々なグッズが商品化されました。
プラモデル
日東科学よりプラモデルが発売されていました。
ギミックは猫目小僧の腕が回転しスプリングで首が飛ぶようになっています。
また、台座の左に一つ目妖怪が付いていて、起きたり倒れたりしました。
「油すまし」「から傘」などの大映妖怪シリーズに続いて発売されましたが、売れ行きがパッとしなかったせいで少数しか生産されませんでした。
昭和44年に発売された初版のボックスアートは楳図かずお自身の筆によるものでした。(再版時はテレビの絵が使われています)
当時の定価は50円です。(テレビ化で再版された定価は100円)
スケッチブック
ショウワノートからスケッチブックが発売されました。
猫目小僧の他に、「きつねつき少女」「へび少女」のノートなども商品化されました。
フーセンガム
『猫目小僧』は、「少年キング」とタイアップしたカネボウ・ハリスのフーセンガムのキャラクターに使用されたことがあります。
ガムラベルや、その景品の立体シールに広く登場しました。
当時は『猫目小僧』を使ったテレビCMもありました。
ごまメモ
立体シールは「少年キング」の人気漫画を立体シールにして、フーセンガムの景品としたものです。版ズレがひどく、たいへんお粗末な出来でしたが、人気は結構高かったようです。
夜光カード
絵柄は全部で10種類で表面に夜光塗料がコーティングされています。
このカードは全て楳図かずおの描き下ろしによる貴重な商品です。
販売元は丸三商店で、1枚20円でした。
ミニカード
一箱で2枚の当たりがあって、カードアルバムが当たりました。
パッケージとアルバムはテレビの絵ですが、カードはテレビ制作スタッフとは違うイラストレーターにより描かれたものでした。
妖怪の種類はこのカードでほぼ把握出来ます。
天田印刷製で、2枚一組で10円で売られていました。
レコード
主題歌は堀江美都子で、日本コロンビアよりレコードが発売されました。
この他に、カゲスターとカップリングになったコンパクト盤・他のアニメ主題歌とともにカラオケが収録されたLP盤などもありました。
まとめ
漫画・アニメ・実写、どれもパンチが効いています。
こんな媒体ごとにそれぞれ個性がある作品はあまり無いのではないでしょうか。
特にアニメのゲキメーションは、もっと広く知られて色んな作品に活用されて欲しいです!
『猫目小僧』自体は楳図かずお作品の中では有名な部類ではないかもしれないけど、楳図作品を語るには欠かせない名作だと思います。
時代の違い故、何かと差別表現扱いされてしまい半ば封印作品・放送禁止状態なのが残念です。
漫画だけ・アニメだけしか見たことない方は、是非この機会にそれぞれの良さを堪能してみはいかがですか?!